スシゴコロ ~寿司とSUSHI~

寿司をもっと世界に広めたいと願う料理人の思うこと

世界に外国人寿司料理人を!

f:id:sushigokoro:20190207123718j:plain

すし学校の卒業生、ギリシャ人のアントニスさんは、生まれ故郷のアテネでSushi Mouというお寿司屋さんをしています。そのお店はアテネで(たぶんギリシャ全土で)初めて本格的な江戸前寿司を「おまかせ」スタイルで提供したお店として国内外でとても高く評価されています。

 

そんなアントニスさん、2016年に「世界のベストシェフ100人」の一人に選ばれました。日本からは「すきやばし次郎」の小野次郎さん、「菊乃井」の村田吉弘さんや「龍吟」の山本征治さんなど、そうそうたるメンバーが選ばれた権威ある賞です。アントニスさんは寿司料理人として非日本人で初めて選ばれる快挙となりました。こういうニュースを聞きますと、まるで自分のことの様にうれしいですし、次のアントニスさんを輩出しようと、学校での授業にも力が入ります。

 

「世界のベストシェフ100人」詳しくはコチラ↓

https://www.finedininglovers.com/blog/news-trends/100-best-chefs-2017-le-chef/

 

アメリカで寿司料理人をしていた時のことですが、お店のオーナーから一緒に働く外国人従業員のトレーニングをよく任されていました。日本に帰ってきた今になっても、当時トレーニングした従業員の何人かが独立しました~と、たまに連絡をもらったりします。しかしながら、アントニスさんの時の様な喜びを感じたことはありません。それは何故なのか?

 

レストランで従業員をトレーニングをすることは、そのお店がお客さんに提供している料理やサービスを、知っている人が知らない人に教える一方通行なやり取りです。お店にとってお客さんが最優先ですので、お店が提供する料理やサービスをお客さんが満足する一定の品質で守らないといけません。その品質保持を任される従業員を教育するにあたり、わたしの個人的な経験やノウハウは特に必要なく、従業員の誰もがお店のメニューにある料理や接客の品質を、いつも同じく提供できる統一性やルールの徹底の方が大切になってきます。

 

すし学校も基本的には知っている人(講師)と知らない人(生徒)の組み合わせですが、レストランと違ってお客さんはその知らない人(生徒)になります。知っている人(講師)がお客さんである知らない人(生徒)に満足してもらえるものを提供する・・・という図式です。この場合、お客さんである生徒さんは、学校が定めるカリキュラムをただ一遍通りに教わるだけではなかなか満足してくれません。メニューにある料理だけではなく、裏メニューにある特別な料理も出してください、と言ったところでしょうか。

 

裏メニューにある特別な料理。ここで必要になってくるのがわたしの個人的な経験や体験、ノウハウになります。実際に学校で生徒さんに良く聞かれるのが、わたし個人の成功例や失敗例だったりします。そんな対話を通して生徒さん自身が様々なアイデアや選択肢を見つけ出し、自発的に行動し自分の目指す道へと進んでいく・・・。この双方向なやり取りこそがレストランでの従業員トレーニングと決定的に違うところです。

 

そこで最初にご紹介したアントニスさん。わたしが彼の成功をとてもうれしく、そして今後の励みになると思えたのは、彼との対話の中で彼がいつどこでどんなお店をやりたいかという夢を知り、その実現に向けて日々努力する彼と同じ時間を共有することで、彼の夢をほんの少しだけ分けてもらっていたのだと気づきました。これからもまた誰か他の生徒さんのステキな夢に出会い、それを少しだけ分けてもらいながら応援していければと思います。