スシゴコロ ~寿司とSUSHI~

寿司をもっと世界に広めたいと願う料理人の思うこと

外国人生徒さんとスタージュ

最近、すし学校にやってくる生徒さんから「日本でどこか寿司・和食店で働けるところを紹介してほしい」という要望が増えています。彼らの多くは既に自国でシェフとして働いており、学校の授業では得られない「実際の現場」を体感したいという思いです。このリクエストなんですが、わたしや学校のスタッフがいつも大変困ってしまうことの一つです。

 

彼らは実際の現場に入るという体験を得たいのが目的ですので、給料をもらおうという気はさらさらありません。西洋料理、特にフランス料理界で脈々と受け継がれている「スタージュ」という職業研修の感覚です。無給とはいえ、その研修先を見つけて紹介することはなかなか出来ない難題なのです。

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今まであまたの日本人料理人がフランスを始めとしたヨーロッパの国々へ料理の修業に旅立ちました。ミシュランの星付きの名店などは誰かの紹介なしではまず雇ってもらえませんので、大体はこの無給研修の「スタージュ」をお願いする流れになります。もしその研修期間で技術を認められれば正規契約を打診され、晴れて給料がもらえるようなります。

 

しかし1店舗目の研修先で直ぐに正規契約になることは先ずないでしょう。2店舗、3店舗と渡り歩き、1年ほどかけてようやく正規契約がもらえるのが一般的です。すし学校にやってくる生徒さん達も、初めは皆この「スタージュ」で料理の世界に入り、色々なお店を渡り歩いて経験を積んでいった人たちが多いです。

 

そんな西洋の料理の世界ではごくごく一般的な「スタージュ」ですが、いざ日本に置き換えてみますとなかなかうまく当てはまりません。昔風にいうと丁稚奉公が思い当たりますが、無給という訳ではなくちゃんと給金がありました。そもそも丁稚は一つのところに長く務めるものですので「スタージュ」とは性質が違います。学生時代、就職前にお目当ての企業で経験を積ませてもらうインターンシップも、先ずもって有給のお仕事です。

 

料理人の世界にも「包丁一本さらしに巻いて~♪」なんて歌がありましたが、あれは職人が色々な店を渡り歩く修業のお話でこれも有給です。あれこれと考えてみましたが、完全に無給で「現場で働く経験のみが対価」というのは無いんですよね。日本の文化の中で手に職をつけるというのは徒弟制度であり、親方が弟子を取る・・・、やはりこのイメージが一般的です。

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すし学校にやってくる生徒さん、給料なんていらないから働かせてくれる店を紹介して!と言われましても、受け入れ先のお店が弟子を取るイメージで身構えてしまうので、なかなか紹介までに至りません。もちろん言葉の問題で「コミュニケーションが取れないから無理!」とお断りされるお店も多いですが、弟子を取るイメージで預かる側の責任まで深く考え過ぎてしまうケースが多いと感じています。

 

ちょっとでも興味のある方にはもう少し気楽に考えて頂いて大丈夫ですよ、とお伝えしたいです。仕事も食器下げや皿洗いから始めてもらい、もし見込みがあれば魚や野菜の仕込みを任せてみる。学校に通っている間だけですのでせいぜい2か月間が限度ですから、最後に少しだけでも実際にお客さんと接する機会があればもう十分です。もしお店に外国人のお客さんが多く来られるのであれば、どんどんホールに出て行ってもらうと良いでしょう。仕事は何でも良いのです。「スタージュ」を求める生徒さん達には見るもの全てが新しく、貴重な体験となるのですから。

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そんな生徒さんたちを受け入れてくださるお店がほんの一握りですが存在します。わたし達にとっては本当にありがたいことです。最後になりましたがそのお店をご紹介して終わりにしたいと思います。もしこのブログを読んで外国人生徒を受け入れたい!という方がいらっしゃいましたら是非お知らせください。今日も最後までお付き合い頂きありがとうございました🍣

 

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