スシゴコロ ~寿司とSUSHI~

寿司をもっと世界に広めたいと願う料理人の思うこと

「堀江貴文 VS. 鮨職人 鮨屋に修行は必要か?」を読んで思うこと

わたしがお世話になっているすし学校ですが、メディアにちょこちょこ取り上げられることがあります。特に堀江さんが各方面の媒体で「すし職人になりたければお店で修行よりも先ずは学校に・・・」といった発言をされますと、学校への問い合わせが急に増えたりします。数多あるすし学校にとって、堀江さんはとても影響力がある方です。

 

学校でもフリーランスの仕事でも、いつも外国人とだけしか接していないわたし個人にはあまり関係がないので少し残念ですが、すし業界全体の発展のためにも堀江さんにはどんどんこの類いのメッセージを世に送り続けて頂きたいですね。今後ともどうぞよろしくお願いします!

 

そんな堀江さんが最近出版された本が冒頭の「堀江貴文 VS. 鮨職人 鮨屋に修行は必要か?」です。とても斬新な切り口で今の時代のすし業界に投げかけるアンチテーゼです。

 

堀江貴文VS.鮨職人 鮨屋に修業は必要か?

堀江貴文VS.鮨職人 鮨屋に修業は必要か?

 

 

全体的な感想としましては、すし職人に修行が必要かどうか?が論点と言うよりも、堀江さんと親交のある30代~40代の若手すし職人たちとの対談をまとめた本で、今の時代のすし職人の在り方や成功の秘訣等々が記された一冊といった方が良いでしょうか。お決まりの「ドヤ顔」で一躍有名になった照寿司の大将も掲載されていて、まさに新進気鋭の職人さんたちばかりです。

 

 

でも、こういった切り口はとても堀江さんっぽいと思います。すし業界に向ける目線が完全にお店に行くお客さんの目線になっています。お店を経営する側からすれば、名店と呼ばれる店で厳しい修業を積んだ職人が握るすしこそがお客さんに喜ばれると思いがちですが、今すし屋に来るお客さんは職人達よりももっと情報収集に長けていて、今の時期は何処産の何々がおいしい、どこそこのブランド魚が絶品!といった感じで、技術も大切ですが先ずは食材の良さを第一に求めているのが現実です。

 

また、接客能力は今の時代において一流のすし職人が身に着けるべき必要不可欠なものとも言っています。ネタは新鮮で当たり前、新鮮なネタを使えば美味しくて当たり前、となれば、次に問われるのが接客力です。カウンターのみの高級すし屋ともなれば職人とお客の距離を隔てるものは殆どなく、職人は舞台の上に立つエンターテイナーと化します。そこで真顔でただ黙って握るだけでは良い接客とは言えない時代になってきています。

 

お店によってはこの魚は何処産の何々で、こういった仕事をしてお出ししていますと、一貫一貫丁寧に説明してくれるところもあります。そんな巧みな話術と共に、お客さんは職人のすしを握る所作の美しさや人柄、為人に魅せられていくのです。美しい所作や美的感覚を身に付けようと、茶道や生花、書道を嗜む職人さんもいます。お店での厳しい修業でそういった話術や所作を磨けるのかと言えばそうではありませんので、堀江さんの言うスナックなどで働いて接客を学ぶ・・・というのも極論ではないなと、個人的には同意できます。

 

すしの世界には「シャリ炊き3年、握り8年」なんて言葉があり、それを信じて疑わない下積み原理主義者みたいな人たちがまだまだいっぱいいます。なので、どうしても長い修業が必要という結論になってしまいがちですが、結局のところ、すし職人として成功するには自分を磨くある一定の時間が必要・・・、というのは否定できないところだと思います。お客を楽しませる人間力、より良いものをお出ししようと常にチャレンジする反骨心、時代のニーズを読み取る嗅覚など、すし職人に限らず、あらゆるビジネスの世界において成功している人とは、現状に満足せずに常に向上心を持って長期的に物事に取り組んでいる人です。

 

今のすし業界は古いしきたりと新しい価値観が並存している時期で、そこから次の世代に合った新しい形が生まれ、最終的によりグローバルでより幅広い層から支持されるものだけへと淘汰される・・・。すし業界は、そんな進化の過渡期にあるのだと考えさせられます。いずれにせよ、努力なしには成功はないですし、また、その近道もないということを肝に銘じなければいけないと、わたし個人にとってはそんな自戒をする良い機会を与えてくれた本です。

 

最後になりましたが、この本に登場する8人の店主の中に以前のブログでご紹介した「はっこく」の大将が出てきます。すし学校の生徒さんがお世話になっているお店ですので、再度、この場をお借りしてご紹介させて頂きます。本日も最後までお付き合い頂きありがとうございました🍣

 

はっこく

食べログ はっこく

 

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